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2011年5月

The D.S.K. Affair

このところ毎晩フランスのTVニュースや報道番組では、「DSKアフェアー」でもちきりです。

「DSK」とは「Dominique Strauss-Kahn」のこと。John F. Kennedyを「JFK」と言うのと同じです。

つまり、国際通貨基金(IMF)前専務理事のドミニク・ストロスカーンが、ニューヨーク市内の高級ホテルで女性従業員に性的暴行を加えたとして、強姦(ごうかん)未遂罪などで、出国直前にケネディー空港でニューヨーク市警に逮捕された事件です。

世界の金融を左右する大物政治家が、手錠をはめられ、拘束されて連行される映像が繰り返し流れました。

DSKは、IMFの専務理事だったと言うだけではなく、フランス有数の経済学者であり、法律家でもあり、経済・財政・産業大臣も務めた社会党の大 物政治家です。次回の大統領選挙では、共和党のサルコジ現大統領の対抗馬と目され、フランス社会党が彼に大いに期待していた人物です。

ただ彼の女癖の悪いのはつとに有名で、女性のスキャンダルもあったのですが、そこはお国がら、色恋のスキャンダルには、犯罪ではない限りラテン系の国ではびっくり

するくらい鷹揚なのです。
シラクだって、あんな謹厳実直な顔をしたミテランだって愛人がいたことは衆知の事実だし、イタリアの首相シルヴィオ・ベルルスコーニなんかは、少 女買春や娼婦を交えた怪しげなパーティーを主催したとしてたびたびスキャンダルになっていましたが、お咎めもなくいまだに首相として君臨しています。

しかし、今度の事件は、犯罪になってしまったのです。どこの国でもそうですが、ことにアメリカでは強姦罪は、殺人罪に次ぐ卑劣な犯罪で、もし彼の罪が確定すれば、10年以上はアメリカの監獄に収監されることになるそうです。

それで一昨日はフランス2のテレビ局で、社会党や共和党の政治家や学者、文化人、はては人権擁護団体やフェミニスト(女性運動)の代表まで、集まって喧々諤々討論を2時間以上も繰り広げていました。 ぼくはその番組を見て、ヤレヤレと思しました。
たかが一人の男(たとえそれが世界に冠たる政治家であれ何であれ)の”オチンチン”の問題で、フランスの知識人たちが、額を鳩め、真剣に、口角泡を飛ばしてやり合っているのです。

はては、サルコジ大統領側(共和党)の陰謀説まで流れ、『フェラチヲ』の強要なんて言葉が、真面目な顔で飛び出して思わず吹き出してしまいました。日本ではそんな言葉を政治の場で、真剣な顔をして口に出すでしょうか?

ぼくはそのとき20年くらい以前にWHO(世界保健機構)に勤めていたノルウエー人のドクターから聞いた話を思い出しました。

当時はエイズが猖獗をきわめて、まだ解明されていなかったころのことです。

WHOではエイズ対策に特別委員会をもうけ、伝染病や性病の世界の権威を集めて連日会議を開いていたそうです。

ある会議で(ぼくの友人の医者もその会議に出席していたのですが)、エイズの性交渉による感染について意見が交わされていました。

異性間の交渉を検討したあと、同性間のセックスについて話し合うことになりました。そのとき中国代表の委員が「ああ、そういう行為は我が国では存在していません」と、宣言して、他の委員をあきれさせたそうです。もちろん彼は全員によって無視。

さて、アナルセックスでは?、フェラチオでは?、キッスでは?などなどが討議され、一人の委員が「RIMING-アナルを舐めたり吸ったりする性行為ー」による性感染について質問したそうです。
そのときぼくの友人のノルウエー人の医者の隣の席にいた、アフリカからの委員が小声で「RIMING って何か?」とささやいたそうです。それで友人がこれこれの行為のことだと言ったら、
突然会場に響き渡るほどの大声で「WHAT!」(なんだって!男が男のケツの穴を舐めるだって!)「I CAN’T BELIVE IT!!!」と、思わず叫んでしまったそうです。

一瞬会場はしら~となったそうですが、次の瞬間は何事もなかったように会議は続けられたそうです。

でも委員長はじめ、会議に出席のメンバーたちは、笑いをこらえるのに、どれほど苦しかったことか。ぼくの友人は会議が終わるや否や廊下に飛び出して、大笑いしたそうです。

世界の権威がそんな単語を並べて討論するのも、それが命にかかわるエイズと言う大問題だからですが、今回の問題は、強姦ではなく、強姦未遂だった わけだし、相手のメードさんに暴力を振るったのかどうか分かりませんが(もちろんのDominique Strauss-Kahnの弁護士は否定しています)、そんなことは連日問題にするような大事件なのでしょうか!

まあ、あの事件が起きてから、ユーロが暴落したと言うのですから、経済界にとっては由々しきことでしょう。それにしても、一人の男の「おちんちん」が世界の経済を左右するっていう、この世界の仕組みのほうが、ぼくにはずっと不思議です。

それからこんなことを発言する精神科のお医者さんもいました。
人間には、無意識の自己破滅欲望があると言うのです。それも頂点を極めた人にきざす心理現象で、Dominique Strauss-Kahnの場合は、もう一歩でフランスの大統領という頂点に到達する寸前で、無意識のうちに、抑制しがたい自己破滅の衝動が兆し、ああい う行為にでてしまったのではないか?・・・歴史上の将軍や勇者が、勝利を前にしてまったく馬鹿げたミスで破滅してしまうので、無意識に働く自己破壊の欲求 から起こってしまうからだというのです。

まあぼくたち凡人にはあまり関係ないでしょうが、一国を掌握するような権威を手にすると、きっと心の奥底には、そういう自分を貶めたいと言うような衝動が起きるのかもしれません。

歴代の日本の首相の驚くような、そして致命的な言動などもそういう心理なのかもしれませんね。

もちろん強姦罪は、厳しく罰すると言うのはぼくも賛成です。ところで、相手がホテルのメイドじゃなくて、ボーイだったらどうなんでしょうね???・・・・・